TOHOKY UNIVERSITY

TOHOKY UNIVERSITY Intercultural Co-learning Class 国際共修クラス

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どう創る?国際共修のデザイン


「学生がお互いから能動的に学ぶ機会を作り出す」なんて、言うのは簡単だけれど実際には難しいのでは?と思われるかもしれません。一体、どのような学びの状況が国際共修なのでしょうか?そして、授業や活動の担当者はどのようなポイントを押さえれば、そうした学習環境を作ることができるのでしょうか?例えば、次のような状況のみでは、国際共修が実現する可能性はとても低いでしょう。

  • 留学生と国内学生など、文化的・言語的に多様な背景をもつ学生が同じクラスにいる
  • ディスカッションやグループワークを学習時間にふんだんに取り入れている
  • 学習者の外国語能力向上を最優先の目的としている
  • 学習者の言語運用能力や経験・知識・スキル・態度の差を「多様性」と捉えて授業や活動を設計している

これらの状況には共通して、国際共修をデザインする担当者による教育上の「意図的なしかけ」が十分にはなされていません。

授業や活動において国際共修をデザインするときには、次の2つの問いを常に頭におき、これらの問いを満たす方法を周到に設計することが重要です。

  1. 学びの場にいる全員が、お互いから学ぶということの意義を理解できる方法をとっているか?(意義の理解)
  2. 学びの場にいる全員が、実際にお互いから学ぶことができる方法をとっているか?(方法の実施可能性)

上述の国際共修とはいえない4つの状況に、上のような「意義の理解」「方法の実施可能性」に関する2つの問いに応えるような方法を追加してみましょう。そうすれば、授業や活動の目標にアプローチ可能な理想的な国際共修の場が創出されます。

✕留学生と国内学生など、文化的・言語的に多様な背景をもつ学生が同じクラスにいる

  • 授業や活動のはじめに、クラスに参加している学生が自己紹介をするなどして、文化・言語的に多様性のある学習の場が用意されていることが参加者全員に分かるようにする
  • 学生の自己紹介や簡単な共同作業などを通して、授業で使用する言語の各学生の習得状況を全員がおおまかに把握できるような機会を作る
  • 文化・言語的背景が異なる学習者が集まっていることと、授業や活動の目標とを関連づけ、背景の違いを学習リソースとすることが可能であることへの理解を促す

✕ディスカッションやグループワークを学習時間にふんだんに取り入れている

  • なぜ、ディスカッションやグループワークが学習に組み込まれているのか、その理由を学習者全員が理解できるよう説明する
  • ディスカッションやグループワークによる成果がどのようなもので、どのように評価されるのかを学習者全員が理解できるよう説明する
  • ディスカッションやグループワークによる成果が、授業であれば成績評価、課外活動であれば活動の目標に対しどのように貢献するのかを、学習者全員が理解できるよう促す

✕学習者の外国語能力向上を最優先の目的としている

  • 国際共修ではどのような授業や課外活動であっても、達成目標の中に「協働による学びの深化・広がり」が組み込まれており、それが最重要の目標の一つであることを学習者全員が理解できるよう促す
  • 個別学習で習得可能な言語能力向上を超えて、国際共修では共に学ぶ学習者との協働により得られる俯瞰的なものの見方や考え方、価値観の再構築などに重きを置くことを学習者全員が理解できるよう促す
  • 授業では成績評価において、課外活動では目標において、学習に使用する言語の運用能力がどのように考えられ、評価されるのかを最初に学生者全員に説明する

✕学習者の言語運用能力や経験・知識・スキル・態度の差や違いを「多様性」と捉えて授業や活動を設計している

  • 授業や活動の冒頭で、学習者一人ひとりのこれらの差や違いを担当者が把握する機会を作る
  • 授業や活動の担当者がこれらの差や違いを理解し、学習者の学びの場で調整や補填すべきことと、違いを多様性として活かせることを見極め、学習をデザインする
    例:グループプロジェクトにおいて、できるだけ学生間の文化・言語、経験、知識、スキルが多様になるようにグループ分けをする/ 同様の文化的背景をもつ学生でも経験の異なる者を同じグループに入れることで、文化や経験など複数の要因が複雑に作用して価値観が形成されうることへの理解を促す
  • 授業では成績評価において、課外活動では目標において、学習者におけるこれらの差や違いがどのように考えられ、公平に評価されるのかを学生者全員に説明する