「国際共修」とは何か?
国際共修とは、文化や言語の異なる学生同士が、グループワークやプロジェクトなどでの協働学習体験を通して、意味ある交流(Meaningful Interaction)により相互理解を深 めながら、他者を理解し、己を見つめなおし、新しい価値観を創造する一連のプロセスのことを指します。
これは、ただ単に同じ教室の中で学習者が机を並べ講義を聞いている状態を指すのではありません。学習者同士がある共通の目標に向かう協働を通して、みずから多様性を受容しようとする姿勢を身に着け、また自分自身の価値観がどのようなものであるかを見つめ直す能動的な学習機会です。
国際共修と一口に言っても、学びの環境や学習目標により学生間のインターアクションの頻度や形態が異なります。ただ共通するのは、文化的、言語的な多様性を学習リソースとする学習者間の交流を通して、学習者が自らの学びにオーナーシップを見出すことに重きを置く(Leaner-centered)点です。
これまでに、教員など指導する人の指示に基づき勉強することに慣れている人は、最初は戸惑うかもしれません。しかし、多様な価値観やワークスタイルが入り混じる環境で、自分でものごとを考え、行動を起こすことは、あなたが能動的に生きるうえでとても重要なことです。その大切さと楽しさを国際共修を通じて学び、「自立した学習者」に成長する知的な喜びを感じてください。
海外における国際共修の動向
多文化社会のアメリカやオーストラリアでは、このような多文化的な教育環境でなされる切磋琢磨が学習者の異文化理解、自文化理解、視野の拡大、異文化コミュニケーション力の向上に効果的であるという数多くの研究蓄積があります。また、近年では、オランダやドイツなどの欧州の非英語圏、そしてアジアではシンガポールや韓国でも、国際共修環境を取り入れた教育・学習実践例が報告されています。
国際共修のタイプ
日本の高等教育において最初に国際共修が取り入れられたのは、日本語教育分野であると言われています。留学生を対象とした「日本事情」、いわゆる日本の社会諸相について、時事問題や日本的な価値観、他文化との比較が盛り込まれたテーマを通して学習するクラスに、日本人学生を参加させる形で始まったケースが多いようです。
2000 年代からは、国際化拠点整備事業:大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業(通称グローバル30、文部科学省2011 年~2015 年度)、および経済社会を牽引するグローバル人材育成推進事業(文部科学省、2013~2017 年度)などの大学国際化を促す取り組みにより、学習者のグローバルマインドセットを涵養するための、留学生や国内学生向けの英語を教授言語とする科目が導入されると、そのような教育プログラムにおいて国際共修を採用する授業科目も増え始めました。
そして近年では、地域社会や産業界との連携による国際共修や、海外の連携機関との海をまたいだ協働学習など、様々な形での国際共修の多様化が進みつつあります。
国際共修のススメ
社会のグローバル化が進み、私たちを取り巻く環境はますます相互依存が深まり、様々なシステムが複雑化しています。育った環境や言語や文化や大きく異なる人たちと協働・共生する社会の到来は、もうすぐそこに見えています。私たち一人ひとりが、自分にとって「異」なるものに耳を傾け、共感し、相互理解の基盤を築いた上で自分の考えをきちんとアウトプットできるようになること。このような、これからのグローバル社会に求められるチカラを得るためのきっかけをつかむ学習機会が「国際共修」なのです。
©Global Learning Center, Tohoku University