TOHOKY UNIVERSITY

TOHOKY UNIVERSITY Intercultural Co-learning Class 国際共修クラス

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Once in a life experienceー仙台の伝統文化「すずめ踊り」の経験をオンラインでも



教員インタビュー

東北大学 高度教養教育・学生支援機構  グローバルラーニングセンター

特任助教 林聖太 

講師 新見有紀子

記事作成 櫻井沙樹

 

東北大学では「宮城の伝統文化―すずめ踊りを通して、日本を知る」という国際共修ゼミが毎年開講されています。パンデミック以前は日本人学生と留学生が一つのチームとなって仙台青葉まつりに参加していましたが、今年はオンラインでの開講となりました。今回はこの授業を担当されている林先生と新見先生にインタビューしました。

 

オンライン授業にかける思いを教えてください。

 

新見先生:この授業では、受講生は実際に、仙台青葉まつりに踊り手またはお囃子の演奏者として参加します。お祭りに参加するという部分が非常に特徴的な授業であり、また、大変貴重な経験になりますので、可能であれば今年も実際にお祭りに参加したいと思っていました。しかし、今年度も、パンデミックのため、チームとしての参加を見送ることになりました。お祭りに参加しなくても、すずめ踊りを通してどのようにして日本文化のことを学んでもらい、踊りの楽しさを伝えられるか、そして効果的にオンラインツールを活用していく方法を考え、制限がある中でできることをしようと気持ちを切り替え授業に臨みました。

林先生:この授業は参加型の授業でお祭りに参加すること、またすずめ踊りの練習を通して「頑張り」、「道」、「集団意識」の精神を肌で感じることが売りでした。しかし、昨年度はオンライン開講となり、お祭りにも参加できず地域の方々との関わりが希薄になってしまう点が残念でした。今年度はこれを改善するために、外部から講師を招き、オンラインでも実際に踊りを習う授業回を設けるなど、「参加している」と感じてもらえる授業構成にすることを意識しました。

 

オンライン授業での困難はどのようなものがありましたか。

 

新見先生:一番の困難はコロナ禍でお祭りが開催されず、チームとして参加できないということでした。そのため、工夫してできるだけそれに近い経験をしてもらうこと、また踊りの練習だけではなく、幅広い経験をしてもらうことを意識しました。東北地方のお祭りについて知ってもらうセッションを入れたり、体験型という点でグループワークの「おうちですずめ踊り」のビデオプロジェクトも取り入れました。グループワークによってチームで取り組むという経験もしてもらえたと思います。

林先生:踊りの練習と課題設定に苦労しました。昨年度はオンデマンド教材を使用し、学生は自宅ですずめ踊りを練習しながら各自2分間の演舞を録画するという課題でした。今年度は、一歩踏み込んで留学生との混合チームで一つの演舞を録画する課題に変更し、チームで協力して取り組めるよう工夫しました。学生からも「グループのみんなと一緒に活動できてよかった」という声が聞かれました。

また、海外からのオンライン履修生の可能性を考えながら準備を進めてきました。対面授業を入れるかどうか、練習の時間をどうするかというところで、オンデマンドも組み込んで海外からの履修にも対応できる授業形態にしました。

 

今年度、授業を開講できてよかった点はありましたか。

 

新見先生:大きなクラスではなかったのですが、その分学生は積極的にディスカッションやグループワークに参加してくれたと思います。少人数であったからこそ発言しやすい環境を作ることができ、国内学生にとって英語でのディスカッションの経験を積んでもらう場になったと思います。授業の後半に近づくにつれ、当初と比べて学生の成長も見られ、その点ではよかったのではないかと思います。

林先生:オンライン授業では、お祭りのサイトや動画などのWeb上のリソースを手軽に授業内で紹介できた点でオンラインのメリットを活かせたと思います。グループ分けの移動時間も教室で行うより、オンラインの方が手軽でより簡単に分けることができるため、その分ディスカッションに時間を取ることができました。

 

学生からの反応はいかがでしたか。

 

林先生:コロナ禍では留学生の入国がストップし、留学生と深い議論をする機会が少なくなりましたが、オンライン開講で留学生・国内学生の交流ができることに喜びを感じています。日本国内にいたら、少人数で日本のことを英語で話すという機会は稀ですが、留学先では頻繁にそういった場面に出逢います。今後留学を考えている学生にとっても、留学の第一歩として国際共修の授業を履修してもらいたいと思っています。

 

T U J Pの学生も参加された回もありましたが、反応はいかがでしたか。

 

新見先生:すずめ踊りの授業はT U J P(Tohoku University Japanese Program, 短期留学プログラム)で合同授業として1コマ入れました。オンラインを使って海外にいながらも、画面越しに一緒に踊るというアクティブなものでした。同じ扇子を持つことで統一感を持って一つの集団として踊りに挑戦してもらい、チームとして参加するすずめ踊りの雰囲気を味わってもらうことができたと思います。参加学生の満足度がとても高く、普通に日本へ旅行したとしても仙台の踊りを経験豊富なインストラクターから教えてもらうことはできないので、本当に貴重な経験になったという声が聞かれました。

 

今後の展望をお聞かせください。

 

新見先生:今回もお祭りに参加できなかったので、来年以降はできれば対面開講をして、お祭りに参加する形で実施したいです。初年度は林先生と一緒に対面で開講することができましたが、その後2年連続でオンライン開講となりました。今後は今までの経験を生かしてお祭りに参加したいと思っています。具体的には早めに参加者をしっかり集めてチームを作り、楽しみながら踊りやお囃子の完成度を上げていきたいと思います。

林先生:オンラインでも参加型の国際共修ゼミができたということで自信になりました。対面開講でお祭りに参加することが理想ですが、この2年間で蓄えてきたオンラインリソースを活用してより質の高い授業を提供できればと考えています。また、対面開講となった際にはより多くの踊り手に参加してもらいたいので、今後もこの授業の良さをアピールしていければと思っています。

 

東北大生へのメッセージをお願いします。

 

林先生:この授業を履修することで日本文化について改めて考える、そして考えたことについて留学生と話す機会があるということがこの授業の良い点ですのでぜひ参加してもらいたいです。参加型の国際共修ゼミなので体を動かす機会が多いです。参加型の学びを通して留学生とコミュニケーションをとっていくスキルも身につくので、英語に自信がない学生でも参加できる授業です。特に、留学生との交流する機会を求めている学生にはおすすめなので、積極的にこのような国際共修ゼミに参加してもらいたいです。

新見先生:東北大学生として仙台に縁ができた学生にとって、仙台青葉まつりに実際に参加でき、また留学生とも交流することができる魅力的な授業であると思います。特にあまり英語力に自信がない、留学を考えているけれども何から始めて良いのかわからないという人にとっては、踊りや音楽の演奏という要素も入っているので、他の国際共修の授業に比べて参加のハードルが低いと思います。このような活動や、留学生と一緒に何かを共同で取り組んでいくという経験、また留学生に英語で日本文化について話す経験ができるので、ぜひ参加してもらいたいです。また、地域の大きなお祭りに、パフォーマーとして参加するというのは日本人にとっても本当に特別な体験であると思います。過去に参加してくれた留学生で、この授業での経験を「Once in a life experience」と言ってくれた人もいました。この授業では、東北大学と仙台・青葉まつり協賛会が連携して行っているので、例年経験豊富な方が踊りを教えてくれ、一緒にお囃子に参加してくれます。サポートを受けながら参加できるので「本物」の体験ができると思います。そういった意味でも大変魅力的な授業です。